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ARCHITECTURE

並びの住宅

街のまとまりとして
南北に隣り合うふたつの住宅の計画である。2世帯は近い親族のため、お互いに尊重し合い、独立してはいるが関係としては切れないないふたつの住宅を求められた。
北側のT邸は雁行したヴォリュームでスキップフロアの2階建て、O邸は風車型の中庭プランで、まったく違った構成である。それぞれ趣味趣向も家族構成も違うので、互いに開くのが閉じるのかといった単純な関係には回収せずに、建物同士の関係について深く考える必要があった。
敷地というのは、境界線で明確に区切られていて、建物はこの敷地境界線を越えることはできない。しかし、街を観察すると、通りに面した壁の位置が揃っていたり、外観の色が似通っていたり、植栽が連続していたり、敷地に限定されないゆるいまとまりを見つけることができる。この「境界を越えたまとまり」がふたつの住宅をゆるやかに繋げることができるのではないかと考えた。外観だけでなく建物の内部まで展開させ、部屋と部屋、屋内と屋外、そして隣り合う建物同士の関係性を縫い合わせていった。
まず、同じような広さの諸室をそれぞれの床や天井の高さを変えながら隣り合わせることで常に隣を意識させるようにした。また、ふたつの住宅の間で、共有する外部をはなんで通り芯を連続させ、ヴォリュームを突き出したり凹ませたりして距離感を調整した。外観は、建物を道路側だけ外壁素材を切り替えることで、表裏のある構えを周りと揃えた。
室内から町並みまでさまざまなスケールで「境界を越えたまとまり」を意識することで、全体が繋がるだけでなく、さまざまな場面で多様な関係性をもった。場所ごとや対面する状況ごとに様相を変えて関係を調整しようとする様子は、まるで建物がコミュニケーションをとっているようで楽しい。個々のキャラクターに閉じるよりも、街のまとまりの中に収まっていくような建物のあり方を目指した。

 

  • 『並びの住宅』に寄せられた批評文

『中途半端な「すぎる」こと』 春口滉平 “ちがう山をおりる”により

『「並びの住宅」について 』 佐藤研吾

  • 掲載誌

『 GA HOUSES』 166

『新建築 住宅特集』2019年10月号

所在地
大阪府大阪市
主要用途
専用住宅
設計担当
白須寛規 岩崎裕樹
構造設計
片岡構造 片岡慎策
施工
舩橋工務店 舩橋耕太郎
外構・造園
和想 信原宏平 傳野貴敏
カーテン
fabricscape 山本紀代彦 永吉佑吏子
主体構造・構法
木造在来工法
建築面積
T邸:69.60㎡ O邸:88.73㎡
延床面積
T邸:119.59㎡ O邸:88.73㎡
撮影
繁田 諭