Works

ARCHITECTURE

信貴歯科

この土地で3代つづく歯科医院の建替えである。この医院では地域に根ざした歯科であるために患者さんとのコミュニケーションを大事にしている。そのために建築でできることはなにか。配置や平面は要望を整理することでほとんど決まった。私たちに残されたのは天井と屋根裏だった。
歯科では患者さんは多くの時間、天井を見て過ごす。かなり無防備な状態でじっと天井を見つめることになる。私たちは周辺の建物の形状から敷地に入ってくる陽光の情報を整理し、屋根裏に光が入ってくるように設計を進めた。
手元の明かりを邪魔しないように、屋根裏に入れた光を壁や勾配天井に反射させ、ルーバー越しに緩やかにもれてくる状況をつくった。天井は透明アクリル板に。ルーバーは杉の集成材でつくって全体が無機質にならないように心掛けた。空の状況を緩やかに室内に反映できるため、時間によって明るさが変わるし、夕陽になるとオレンジになり、突然の雨だとふっと暗くなる。
「あれ?雨ふってきました?」「…、そうですね、でも通り雨っぽいですよ。」
なんて会話が治療の合間になされる。歯のこと以外の会話がされるくらいリラックスした関係が、地域にずっとある医院には必要なのかもしれない。この医院では、この場所でずっと繰り返されている陽の移り変わりが、今日も緩やかに時の移ろいを告げている。

所在地
大阪府泉佐野市
主要用途
歯科医院
共同設計
siinari建築設計事務所 山口陽登
構造設計
満田衛資構造設計研究所 満田衛資・海野敬亮
ブランディング
NPO法人Co.to.hana 西川亮・芝田陽介
施工
株式会社 西村工務店
主要構造・規模
木造平屋+ロフト
建築面積
123.28㎡
延床面積
146.16㎡(ロフト面積含む)
撮影
繁田諭