Works

ARCHITECTURE

富士見台の家

敷地は新しく宅地開発された場所の南端にあり、南に3mほど下がって竹林が、同じく西に畑が広がっている。南は竹林といってもけっこう鬱蒼としてるし、畑はいつ住宅になるかわからない。隣地は迫ってるといっても2mも隙間はある。住宅が数十年そこにあるのだから、現状で周りに大してあまり優劣をつけてもしょうがないと思った。周辺に対して厳密過ぎず、もっとおおらかでありたい。

まずは周辺の住宅のあり方に敬意を払い、東壁面を住宅らしい「家型」にした。隣の住宅とほとんど同じかたちだ。屋根は周りの住宅と同じスレートを使い、少しの違和感をもたせるように壁にも同じスレートを使う。そして2階はパブリックな空間(LDK、テラス)としてなるべく開き、1階はプライベート空間(バスルーム、寝室)としてなるべく閉じる、とざっくり決める。

2階は、住宅らしさを背負った東面以外の3面を全部開いた。「腰壁」をぐるっと回し、西側4分の1をテラスにする。テラスの建具を開け放つとまるで物見台だ。

1階は、陽の入る南側以外の3面を全部閉じた。天井高をしぼり2階とのコントラストをつけた。こちらは竹林しか見えない。住宅地にありながらまるで山小屋にいるようだ。

周囲に対する厳密さは、ともすれば敷地のネガティブ要素探しになってしまう。建物の印象をひとつに落ち着けなかったのは周囲の複数性に対して正直で在りたかったからだ。クライアントが探したこの土地を、今後何十年も住み続けるこの場所を最大限肯定できるような建築を目指した。

所在地
神奈川県川崎市
主要用途
住宅
構造設計
片岡慎策
施工
株式会社渡辺勇工務店
主体構造・構法
木造在来工法
規模
地上2階
建築面積
47.62 ㎡
延床面積
82.81 ㎡
撮影
繁田 諭